My hero,my mystery

特撮ヒーローとミステリのブログです

横溝正史シリーズを語るっきゃない①(原作編❶)

 満を持しての横溝正史ネタです。ワシのミステリ歴の原点と言っても過言ではない。回顧録に記したように、ミステリの入口はホームズなどのジュナイブルですが、自分の中にある理想のミステリの形はこれだ! と思えたのは横溝正史先生の作品を読んだ時でした。

 まずは『犬神家の一族』の映画が評判になったのですが、まあ、当時はこれが入口なのは皆同じ。ただし、ワシ自身は映画館へ行ったわけではなく、原作はいったいどんな小説なんだろうと先に読んでみたら……かなりのショックを受けました。それからは文庫本を買いまくり。ただし、限られたお小遣いでは揃えられる作品にも限りがあり、その後ぼちぼちと集めて、廃刊になった作品は近年、電子書籍で何とか揃えて全作品を読破しました。(ただし金田一耕助物のみ、由利麟太郎物は一部、人形佐七物はなし)

 

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犬神家の一族

 横溝シリーズはよく「おどろおどろしい」と形容されます。莫大な遺産を巡る一族のドロドロやら、登場人物の恋愛に過去の因縁と、人間の欲望や怨念が引き起こす事件が描かれ、そこに伝説や言い伝えが絡んでホラーめいてくるのですが、殺人の方法や犯人のアリバイ等、推理の部分は至極論理的な本格物。偶然はあったとしても、見えない何かの力が働いた、のような非科学的な考えは入っていません。お化け屋敷呼ばわりとは、とんでもない言いがかりだと思います。勿論、小説というエンターテインメントですから、舞台の華やかさはあって◎。警察関係者が実際に起きた事件の記録を検分するのとは違うわけだし、地味で暗いだけのミステリなんてつまらないと思いませんか?

 殺人は最も重い犯罪なのは言うまでもなく、そんな重罪を犯すからにはそれなりの理由がなくてはならない。ちょっと恥ずかしい場面を見られたぐらいで人を殺したなんて、そりゃ簡単に殺しすぎだろ。二人以上殺して捕まったら基本的には死刑だぞ。その覚悟があってやってんだろうな? と、思えるようなミステリが存在しますけど、横溝作品に出てくる犯人の動機はどれも納得のいくものであり、捕まったら死刑或いは、自殺覚悟で臨む潔さがあります。中には逃げ切ろうとするふてぶてしい犯人も出てきますが、それはそれでアリだと思う。

 では、そんな横溝作品でワシが選んだベスト10をラインナップしてみようかな。ネタバレになるので解説は簡単に記しておきます。

①悪魔が来りて笛を吹く

 没落した華族の屋敷に出没するのは死んだと思われていた当主。彼が嗜んでいたフルートが奏でる曲のタイトルが「悪魔が来りて笛を吹く」。舞台がお街でいくらかオシャンティーなのと、地味だが頭が良くて好感の持てるヒロイン、納得いきまくりの動機、哀しいラストなど、あらゆる点で狂志郎ベスト1!

②犬神家の一族

 信州の大財閥の遺産相続に端を発した連続殺人。最初の殺人の理由等、やや納得いかない場面もありますが、横溝ブームはここから、というだけあって、華やかさとホラー味のある傑作。

③仮面舞踏会

 男性遍歴華やかな大女優、彼女の過去の夫だった男たちが次々と殺される惨劇。意外な犯人像と、そこに至る「ああ、そうだったのか!」の「目から鱗」が凄すぎる作品。犯人の悪あがきも見もの。

④迷路荘の惨劇

 富士の裾野に建築された豪邸は屋敷内のからくりや抜け穴が存在することから「迷路荘」と呼ばれていた。ここで繰り広げられる殺人劇はとってもスペクタル。名作とされる『八つ墓村』に似た部分もあるけど、こっちの方がオシャンティー。

⑤悪魔の降誕祭

 横溝作品の中ではさほど有名ではありませんが、ひたすらに犯人が憎々しい。他の作品では同情する部分もある犯人もいますが、この作品の犯人には一切なし。さっさと死刑にしてくれと言いたくなるほどで、ある意味潔い。

⑥夜歩く

 タイトルは同じですが、ディクスン・カーの作品とは似ていません。どちらかと言えば某名作なんですけど、誰の作品であるかも口にしてはいけない。って、ヴォル〇モードかよ。何も言えないので、とにかく一読をお勧め。

⑦~⑩悪魔の手毬唄/八つ墓村/獄門島/女王蜂

 横溝シリーズトップを争う作品群で、確かに凄いんですけど(特に『獄門島』は世界のトップ〇〇にも数えられることも)ワシ的には「そうでもない」。ひねくれ者だね、ええ、わかってます。

 また選外としては『三つ首塔』『吸血蛾』あたりはエログロナンセンス、戦後混乱期の猥雑さ、淫靡さを味わえます。が、好き嫌いが分かれる内容。中編だけど評価されているのは『黒猫亭事件』、金田一耕助デビュー作『本陣殺人事件』は動機に難ありでワシのトップ10には入らないかな。BLと呼ぶにはおぞましい、男色を扱った作品もたくさんある。よろしければ、って、オシャンティーには程遠いからね、覚悟がいるかも。

 全部で七十七作品あるため、とても語り切れないし、そもそも全作品の内容を憶えきれていないため(苦笑)今回はこのあたりで。次は(いつになるかは不明ですが)映像化された「横溝正史シリーズ」のドラマについての記事にしようかなと思います。

☆横溝物だけでなく、有栖川物、綾辻物についても語りたいんだよ~。特撮ヒーローもメインもBLサブもあるし、入力追いつかないわ。