My hero,my mystery

特撮ヒーローとミステリのブログです

有栖川有栖作品2️⃣(ドラマ編①)

kyoshirou2021.hatenablog.jp

 有栖川作品・火村英生を探偵とする「火村シリーズ」が2016年に連続ドラマ化された時は大歓迎としか言い表しようがなく、リアタイで視聴&もちろん録画&のちにDVD購入というフルコンボで臨みました。有栖川ファンからは賛否両論、喧々諤々と様々な言われようをしたドラマでしたけれど、脚本も役者の方々も満足のいく出来だったと思っています。

 しかしながら、年月が経つにつれて当時の感動も薄れ、この場でドラマについてのコメを上げることもなく時が過ぎたのですが、先日、ドラマ化された綾辻作品『十角館の殺人』をHuluで視聴。その際に、これまで観る機会がなかった火村ドラマ『狩人の悪夢』もついでに、という表現は語弊がありますけど、そちらも観て、久しぶりに火村シリーズに触れたことにより、これはさっさと記事にせねば「次」がつかえてしまうと思ったわけです。

 つーことで、今回はドラマ編①として、最初にドラマ化&DVDに収録された作品についてのコメになります。そうだな、ここは順番にいくのがやりやすいかも。

※ネタバレ防止のため、ドラマ未視聴の方はここまでにすることをお勧めします。

 

臨床犯罪学者火村英生の推理

①絶叫城殺人事件

 ゲームの内容に沿って行なわれる連続通り魔殺人、という派手な題材の本作はドラマの第一話に相応しい。火村、アリスといった主役はもとより、シャングリラ十字軍やら貴島朱美、坂亦清音といった、他の作品に出てくる人物たちもイメージどおりだし、彼らが最初から登場するあたり、ワンクール通しての構成のためかなと。ばあちゃんこと篠宮時絵は想像していたよりもオシャンで、それもまたアリ。警察関係者は原作の森下刑事→坂下刑事こそキャラが一致していたけど、船曳警部その他を登場させるのはやはり難しいのかなと思った。金田一物もそうだけど、このあたりの改変はドラマ化ではつきものだしね。

➁異形の客

 第二話にこれがきたか。この回に限らず本ドラマは特撮ヒーロー出身者づくしで、観るとそっちの話がしたくてしょうがなくなるんだが、そこは抑えて、機会を改めて。ミステリの部分よりもシャングリラの諸星沙奈江というオリキャラ(だったと思う)へのスポットの当て方が強いというか、火村ホームズに対するモリアーティ的存在、かつ歪んだ愛情を感じている相手、みたいな部分が強調されており、それをドラマの軸としていることに原作との乖離を感じてしまった。

③准教授の身代金

 原作を読んだ時の印象が薄い……これをドラマにするのかと思ったけど、金田一物の時もそうだったけど、脚本とか尺とかキャスト、予算、色んな絡みがあって選んでいるんだろうな。『海奈良』や『乱鴉の島』なんて、ドラマ化したらロケや何やらで絶対に金がかかるってわかるもの。

④ダリの繭

 こちらは③とは反対に、ドラマ化でチョイス確定だと思っていたらその通りになったやつ。舞台も謎解きも派手さがあってドラマ向きだが、繭の風呂(笑)を作るぐらいで予算がかからないだろうと踏んでいたのだ。キャストがイメージに合っていて良かった。

⑤ショーウィンドウを砕く

 倒叙ミステリは苦手で、原作は一度目を通したきり、ドラマも一回しか観ていないためコメはなし。この次に控える『朱色の研究』の前振りを入れてあったのはいいやり方だと思った。やはりアレが原作の中でもメインの話になる、そうするだろうという読みは当たった。つか、誰が考えてもそうなるだろうけれど。

⑥⑦朱色の研究(前後編)

「火村の大学の教え子が巻き込まれた殺人事件。動機にやや難ありだが、火村シリーズ長編の代表作だと思う」←原作編❶で記したコメ。代表作という考え方はドラマ制作陣とも一致したかな。ロケ先がショボくて別荘=避暑地には見えずちょっと残念。

⑧アポロンのナイフ

 火村の写し鏡のような存在として坂亦清音を登場させたかったんだろうなと思った。朱美と絡ませたオリ設定は成功。

⑨地下室の処刑

 原作では森下刑事が拉致監禁されて、そこからシャングリラ十字軍へと繋がる話だったが、ドラマでは火村vs諸星に繋げるという形に改変。殺人の謎解き部分は原作どおりなので、まあええんではないかと。

⑩ロジカル・デスゲーム

 こちらも火村と別の犯人の対決の構図を諸星に置き換え、尚且つラストはホームズとモリアーティの「最後の事件」を彷彿とする劇的な内容に。う~ん、そうきたか。諸星の生死はわからないまま、再登場を匂わせての退場ってところ。まあ、シリーズの〆としてはそうするだろうなと。

『妃は船を沈める』に登場する「事件の核になる女性のキャラ」について「ホームズに対するモリアーティ教授、明智小五郎に対する怪人二十面相みたいな存在になれそう」と、先の原作編の文中で推していたのですが、『妃~』がドラマ化することはなく、濃いめの女傑よりもセクシー美女(諸星)の方が絵になるというか、ラスボスとして物語を彩って欲しいということだったんでしょうか。う~ん。

 さて、2016年のドラマ化ではDVDに収録されたAnother Storyというのが幾つかあるのですが、それらと2019年に放送された2編についてはドラマ編➁で取り上げようと思います。